島根益田市 田ノ原牧場~山地酪農の実践~

島根のちょっと山奥で自然と共に生きる酪農家(を目指す)ブログです。
2017年10月現在、山羊一頭と猫2匹,牛四頭。少しの田んぼと畑を無農薬で細々とやりながら、牛を山に放牧しながら、耕作放棄地となった田と荒れた山を開拓しています。

乳牛の雄の一生について

先日、ゲンジ(ジャージー雄、1歳半くらい)を出荷しました。
枝肉で170㎏くらいになり、買取価格は6万円ほど、出荷手数料が色々かかるので、実質手元に残るのは4万円いかないくらいでした。


これが和牛なら数倍~10倍くらいまでの価格が付きます。
ゲンジは生まれて間もなくお母さんをなくし、また冬の厳しい時期を迎えたので初期の発育が良くなかった牛でした。
それでも良く食べ、後半にはまあまあ肉もついてきました。


深夜まで出産を見守ってココちゃんが産んだばかりのゲンジ

ホタルと2か月違いで産まれ、一緒にいつも遊んでいました。

最初のころ、4頭揃っていたころは、よくみんなでお昼寝をしていた


大きくなると、木の葉っぱや笹を競うようにして食べていました。

去年の厳しい冬もホタルと一緒に乗り越え、ずいぶんと短い間に逞しく成長した

今年もホタルやテルちゃんとともに、山の保全に歩き回っては草を食んでいた

夏の干ばつの時期も、鍛えられた体で難なく乗り越えられた。このころには今まで勝てなかったオス山羊にも勝てるくらい強くなっていた

夏の前後のシーズンにはいつもお腹いっぱいに草を食べていた。それでも中々肉付きが良くならなかったのは、やはり初期に胃袋をしっかり作ってやれなかったせいだろう。


牛は家畜で、最後には必ず寿命を迎える前に淘汰しなければならないときが来る。
既存の流通システムでは、和牛の価値が圧倒的に高く、乳牛の肉なんかは大概全て(乳牛)でくくられて最も安い価格で取引される。


ゲンジはきっと美味しいお肉になれただろう。固いけど、しっかり肉の味があって、ほのかに草の香りが香って、噛めば噛むほど味が出る、いいお肉だっただろう。


それがほかのわけのわからない肉と一緒にされてミンチになって(国産牛)として安値で売られてしまうという事実。
自分が肉を全量買い取って、すべて自前で売り切るだけの力量があれば…


日本では乳牛の雄というのはこのようにどんなに育てても報われないという、産まれついての悲しい運命を背負っている。最近では雌雄判別精液という、高確率で♀が産まれる精液を母牛につけるようになってきたため、乳牛の雄というのも貴重になりつつあるが、扱いは相も変わらず、多少、マシになったくらいだ。


全ての命が、無駄なく、無意味でなく、この世に生まれ、なくなっていけるよう、生産者も消費者もともに考えていかなくてはいけない。

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