長すぎる一日(前編)
10月25日は雨でした。
前日から降りしきる雨で、温度も上がらず地面もぬかるんでいました。
また、青々と生い茂っていた草も少なくなり、牛たちは田んぼのなかにも入って一生懸命わずかに残った草を食んでいました。
この日は仕事で帰りが18時くらいになり、暗い中いつものように牛たちに餌をやりにいくと、いつも真っ先に飛んでくるはずのココちゃんの姿が見えません。
まず子牛たちが寄ってきて、そのあとネネちゃんがのそのそ出てきましたが、牛たちが餌を食べている間も、ココちゃんの声も聞こえません。
これはおかしい、と思い、すぐ家に帰ってお義母さんを連れてきて懐中電灯で山の周りを見て回りました。
ココちゃんはそのあとすぐ見つかりました。
横になって転んで起きれなくなり、おなかにガスがたまって死んでいました。
ぬかるんだ畔で滑って、変な倒れ方をしてしまったため起きれなくなってしまったのです。
牛は4本足なのでぬかるみには強いですが、横になってしまうと自力で立てず、その後3~4時間もするとお腹にガスがたまって死んでしまうのです。
恐らく昼すぎくらいに倒れてしまったのでしょう。ココちゃんの動かなくなった体には、まだほんのり温もりが感じられました。
その日はどうすることもできず、親の近くでなく子牛のゲンジに
「お母さん助けられなくてごめんね」
と謝ってから家に戻りました。
家に帰ってから、どうすればココちゃんを救えたか、自分に何が足りなかったかをグルグル考えていました。
・もっとしっかり冬季の餌を早めにやっていれば
・ぬかるんだ場所を避けて放牧していれば
・見回りに行くのを頼んでいれば
放牧に事故はつきもので、どんなに気を付けても死ぬときは死にます。
特に舎飼いだった牛ならなおさらです。
ココちゃん、ネネちゃんがあまりに順調に山に馴染んでくれてため、油断していた。
牛に甘え、飼い主の責務を果たせなかったことが原因。
初めて外に出されて、虫にたくさん刺されて、夏の猛暑を必死に乗り越え、田んぼに泥まみれになりながら入って草を食べていたココちゃん。
わがままで勝ち気で、ブラッシングが好きな牛でした。
ほんの半年足らずだったけど、ココちゃんのおかげでゲンジは大きく成長したよ。
山の芝もきれいになってきたよ。
上手に飼ってあげられなくてごめんね、今までありがとう
しかし、これは序章に過ぎなかった・・・